2024年お世話になりました

2024年もたくさんお仕事をいただきありがとうございました。プロジェクトマネジメントの新たな視点を獲得できたお仕事もあり、至らないところに気づくとができたお仕事もあり、ハードな一年だったと感じております。特にプロジェクトマネージャーに求められる役割が変わってきていると感じさせられたこともあり、これからのプロジェクトマネージャーの役割について考えてみます。

1. 2024年に感じたプロジェクトマネージャーの役割の変化

市況全般で言えば、プロダクトへのコミットメントや経営視点を持ったプロジェクト進行が求められる傾向が強まっています。単に言われたものを期限内に作って納めるだけでよい仕事もあるにはあるのですが、2000年代の最初の1/4が終わろうとしている現時点においては特に次の点が求められています。

  • 携わる業界の知識を持っている
  • ビジネスとしての損益分岐点をどこにおくか考えることができる
  • プロジェクトの枠外のプロダクトやビジネス、そして企業そのもののありかたや進め方にも提言ができる

このようなことができる人材でないと、請けることができる仕事は限られてくるでしょう。それはソフトウェア開発プロジェクトに携わる人々の役割の多様化からも見て取れます。

2. 指揮型PMOやプロジェクトリーダーなど、プロジェクトマネジメントを行う役割の多層化

たとえば、PMOの役割がただの「オフィス」業務にとどまらず、プロジェクトマネジメントの一部を担うプロジェクトも多くなってきています。書籍 PMBOK第7版実践活用術 の指揮型PMOの記載を以下に引用します。

指揮型PMOは、プロジェクトのスコープ、スケジュール、コストの目標を達成するために責任を負います。また、プロジェクト・マネージャーの長期的な拠点となり、キャリアパスや給与、経費といった管理業務を行います。

この指揮型PMOの定義からもわかるように、PMOは単なる管理業務に留まらず、プロジェクト全体の舵取りに近い役割を担うケースが増えています。つまり、プロジェクトマネージャーとほぼ変わらない役割と責任を持っているが名前だけはPMOです。たとえば、あるプロジェクトではプロジェクト全体のマイルストーンの定義や進捗状況の把握、リスク評価や変更管理など、これまでプロジェクトマネージャーが担当していた業務を全てPMOが行なっていました。このようにプロジェクトマネージャーとPMOの役割が重複する状況において、プロジェクトマネージャーの役割の再定義と独自の価値の提供が求められています。指揮型PMOがプロジェクトに参画している場合、プロジェクトマネージャーとはどのような役割で、何をするべきでしょうか。

また、プロジェクト・リーダーを置いているプロジェクトにおいては、実際のソフトウェアの納品までの管理業務をプロジェクト・リーダーが担っていることでしょう。プロジェクト・リーダーがスケジュールと品質とコストを管理している場合にプロジェクトマネージャーはどのような役割で、何をするべきでしょうか。

3. サーバント・リーダーの可能性

指揮型PMOやプロジェクト・リーダーが実際のプロジェクトの進行を行なっている場合、プロジェクトマネージャーとしてやれることはプロジェクト・リーダーを一つ上に押し上げることに尽きます。そのために私はサーバント・リーダーという概念を適用するとうまく行くのではないかと思っています。サーバント・リーダーとは、チームや個人を支援し、成長を促すリーダーシップスタイルです。プロジェクトマネージャーがサーバント・リーダーという役割でプロジェクト・リーダーを支援することにより、プロジェクト・リーダーが最大限のパフォーマンスを発揮し、かつプロジェクト以外のところに視点を持つことを目指すべきだと考えています。もし、プロジェクト・リーダーが経営やプロダクトを見据えた発言を会議でしているビジョンをプロジェクトマネージャーがもつことができたのであれば、それを達成するために動くのがプロジェクトマネージャーの仕事ではないでしょうか。そのためには、プロジェクトマネージャー自身が経営やプロダクト、マーケットの知識を持つことが必要になり、かつそれを伝えていく技術も求められていきます。それがプロジェクト・リーダーの知見となり、プロジェクト・リーダーがリーダーシップを発揮して進めたプロジェクトの成果物の品質を上げることにつながると考えています。

4. まとめ

プロジェクトマネージャーの役割がプロジェクトの推進や管理だけにとどまることは今後無くなっていくでしょう。PMOやプロジェクト・リーダーと協調しつつ、チームに参加しているメンバーの成長を促すサーバント・リーダーシップを持つべきです。このためにはプロジェクトマネジメントの知識以外にも、業界知見や市場動向をチームに共有し、経営者の視座で物事を考えられるよう促していくスキルが求められます。プロジェクトだけを見るのではなく、自らプロジェクト外の物事を取り入れていく懐の深さが求められていくと考えます。