意見の相違の向こう側に何がある?
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プロジェクトマネジメントを行っていると、日々いろいろな意見の相違を感じます。私自身の意見と他の方の意見とが異なることもあれば、私以外の二人の方が意見の相違をめぐって議論を続けていることもよくみかけます。このような時、プロジェクトマネージャーとしてはとにかく結論をだして先にすすめることを優先してしまいますが、少し時間のある時に次のような観点をもつことで相手の期待値をより深く理解できるのではないかと考えました。
発言の意図の理解
相手の発言の表層をまずは理解しましょう。ここは5つの観点があります。
- 技術的・方法論的妥当性:その主張は専門的知見に照らし合わせて正しいのか誤っているのか。
- 発言者が守りたいもの:この人は何を最適化しようとしているのか。
- 発言者が回避したいもの:この人は何を恐れているのか?
- 発言のレイヤー:例えば技術的ベストプラクティスなのか、責任の所在なのか、組織の話なのか。
- 発言時の前提条件において、発言は合理的か:プロジェクトが置かれている状況と鑑みて発言は合理的なのか非合理的なのか。
一つ一つを説明すると長くなりますが、例を一つ挙げましょう。とあるプロダクト開発において、CPOが「このレポートの情報は不足している、すべてのPDCAサイクルの進捗率と課題、プロダクトに対してのインパクト、価値毀損リスクをすべて記載せよ」と発言したとします。これは
- 技術的・方法論的妥当性としては問題ないですね。CPOなので担当しているプロダクトがどのような状況にあるのかをより細かく知りたいから、具体的に必要としている情報を列挙しているわけです。
- CPOが守りたいものは、プロダクトの改善速度を維持したいと思われます。
- 一方でCPOが回避したいことは、改善速度を上げたことによるプロダクトの価値毀損リスクですね。インパクトと並べて最後に念押ししていることから、読み取れます。
- CPOはテクニカルな指示をしているように見えますが、実際は各施策の責任を指摘できる情報を集めています。
- この発言だけ取り出すと前提条件は読み取れませんが、例えば競合プロダクトがシェアを伸ばしている状況であれば、各改善施策をモニタリングしたいという指示は「マイクロマネジメント」として非難されるものではないでしょう。CPOとしてより細かく把握し、競合に対して先手を打った改善を行いたい、という意図だと理解すべきです。
この5つの観点から発言を振り返ることで、「CPOがマイクロマネジメントしてきた」と感情で捉えるのではなく、CPOが何を求めているのかを自分自身に落とし込むことができます。
発言者の所有しているもの
ここで、CPOが何を所有しているのかを考えてみましょう。ここでいう所有とは法的な所有権ではなく、「自分が守るべきものだと感じている対象」を意味します。実は学生時代からウサギを最優先とする庇護者かもしれませんが、まずは仕事の範囲で考えていきます。
- プロダクト群
- 品質
- CEOへの説明責任
- クライアントからの信頼
- 自身の野望
などが挙げられますよね。役割としては「プロダクト群を統括して管理する」と記述することもできますが、その役割の背景には多数のものを望むと望まざるとに関わらず所有しています。これを理解して発言を見返すと、このプロダクトがCPOにとって重要度の高い、クライアントにとっても貴重な価値を提供できている、誇るべきものであることが窺えます。
発言者のアイデンティティ
さらに奥には、所有物そのものではなく
私はどんな人間でありたいのか
という自己像があります。所有は、その自己像を支えるためのものです。このCPOは、プロダクトを通して「顧客への価値提供をたゆまなく実行できている責任者でありたい」というアイデンティティがあるのかもしれません。このアイデンティティが揺らぐことは、CPOの自己像がくずされることです。人間は所有しているものが毀損することや、アイデンティティへの疑念について即座にかつ過剰に反応する傾向があります。例えば技術者が自らの専門性を否定されると強く反発するように、CPOもまた自らが守るべきプロダクトの品質に対する脅威には敏感に反応します。これを理解すれば、何をCPOに提示すれば良いかがおのずから明らかになってくるでしょう。
AI時代のウェットなコミュニケーション
これまで他のブログ投稿で私が主張してきた通り、プロダクトはAIが無尽蔵かつ即座につくってくれます。またAIは情報整理や分析を支援してくれます。ただし、組織の中で実際に意思決定を行うのは依然として人間です。人間はそれぞれ異なる所有物とアイデンティティを持っているため、同じ事実を見ても異なる結論に至ります。また、人間の所有しているものやアイデンティティはAIには守れません。だからこそ人はディフェンシブになるポイントに変化はないと私は考えています。
人間対人間のコミュニケーションにおいて、ここに挙げた点を気にかけてみることで、相互理解が進むコミュニケーションをとることができます。ぜひ一度試してみてください。
