ゼロコスト・インプリメンテーションとセンス
再び「実装コストがゼロになった世界で何が起きるのか」を考えていきます。今回はNYTの記事をクーリエ・ジャポンが翻訳して配信しているものに面白い記載がありました。
AI時代、人間ならではの価値は「センス」にある? 米テック業界も注目
ちょうど無料で読める範囲の最後の段落に「すべてを実現したくなる。しかし、ほとんどのものは作るべきではない。」「過剰に生産されると、結果は『スロップ』になる」という記載が読めます。つまり、本当に作り、本当に残すべきものは何かが問われるということです。この記事ではコンテンツもプログラムも十把一絡げに議論されていますが、より本質的には「人々が求めているものを提供するには、センスが必要である」という議論に集約されています。
これはソフトウェア開発でも、特に消費者向けアプリについては同様のことが言えると思います。たとえばレシピ紹介アプリの主要機能はなんでしょうか? レシピを掲載し、検索可能にすることですね。レシピを作ってみたユーザーによる再現性の評価も含まれるかもしれません。それだけの機能であれば、AIに指示すれば1日以内でアプリストアに申請可能なバイナリができるでしょう。しかし、現時点からこのアプリを公開したところで、すでにユーザーを集めている競合に勝てるでしょうか。レシピ紹介アプリであなたが何をやりたかったのか、それが問われることはAIの登場以前から重要なポイントでした。レシピ紹介アプリで成し遂げたかったゴールはなにか、それをプロジェクト開始時に明確にする必要があります。
この考え方で昔から有名なのは、AmazonのWorking Backwardsが挙げられると思います。
株式会社ジェネコム、Amazonの「Working Backwards」手法で顧客体験を起点としたFileMakerソリューション開発の進化を目指す
「体験版 Working Backwards セッションのワーク内容」の図がわかりやすいですね。まず最初に製品や機能のプレスリリースとFAQを作り、それを体験する様子を紙芝居で作り、そこからようやくプロトタイピングをはじめる、という流れです。AIを活用する現代であっても、AIへの指示としてプレスリリースとFAQは非常に強力なインプットとなるでしょう。これを書くためには、確かに「センス」が必要であり、それを養うためには経験(特に失敗から学ぶ経験)が重要になってくると考えます。
まずは迅速な意思決定を行い、小さくかつ多数失敗してみる、それを経ることでAIに「これを作れ」と指示できるようになるでしょう。
